夜遅くに海外出張から戻ったロビンは、家の前でブルックと鉢合わせた。
「あら、今帰ったの?」
「これはロビンさん、お久し振りですね」
到底家族とは思えない会話を交わしながら家に入る。
もうみんな寝ているかと思ったが、奇麗に片付いたキッチンでサンジがタバコを吸っていた。ロビンが入って来た途端、ぱぁっとサンジの顔が輝く。
「おっかえりなさい、ロビンちゃん!」
「ただいま、サンジ」
「ヨホホホホホ。今、戻りました」
「お腹すいてない? 何か作るよ!」
仔犬のようにロビンに駆け寄るサンジの目にブルックは入っていない。が、いつものことなので誰も気にしなかった。
「そうね、何か頂こうかしら」
「はーい、待っててね、ロビンちゃん!」
「あ、私も何かお願いします」
サンジはいそいそとエプロンをつけ、キッチンに入っていった。
「もう寝るんだよね。うどんなんかどう?」
「あー、美味しそうですねー」
「そうね。お願いするわ」
「まかせて!」
サンジが鼻歌まじりで料理をしている間に、2人はそっと辺りをうかがった。
フランキー一家の朝は早いが夜も早い。既に『深夜』という時間なのもあって、他に起きているものは居ないようだった。
ふぅっとため息をついたロビンの肩を、ブルックが慰めるように軽く叩いた。
「明日の朝にはみんな起きていますよ」
「みんながいる間に起きれるかしら」
「……夜には集まるんじゃないですか?」
夜更かし2人組が語り合っていると、サンジがお盆を運んできた。
「おまたせ〜。熱いうちに食べてね!」
ロビンの前に熱いどんぶりが置かれる。もちろん、ブルックの前にも。
口や態度では徹底した女尊男卑のサンジだが、それが食事に反映されたことはない。
良くも悪くも変わりのない次男坊にしみじみしながら、うどんをすする。遠い異国で何度も思い出した味だ。
「どうかな、ロビンちゃん」
「美味しいですねぇ」
「てめーには聞いてねーよ!」
「ええ、とっても」
「良かった〜♪」
サンジがくねくねと喜んでいると、リビングのドアが開いた。頭からタオルを被ったゾロがのっそりと入ってくる。
「サンジ、風呂空いたぞ。−−おう、おかえり」
「ただいま、お兄ちゃん」
「ただいま帰りました。ゾロさんはお風呂でしたか?」
「ああ」
和やかに挨拶をするゾロに、サンジが目を吊り上げて怒鳴った。
「遅ぇよ、クソマリモ! まーた湯船で寝てやがったな!」
「だから先に入れって言ったじゃねぇか」
「そしたらてめえ、朝までそのまま寝るじゃねーか! ガス代や電気代、バカになんねーんだぞ!」
「ナミみたいなこと言うんじゃねぇよ」
「てっめー、ナミさんをバカにすんのか!?」
「誰もバカになんかしてねぇだろうが!」
あっという間に2人はヒートアップしていく。真夜中なので乱闘にはならないが、この調子なら時期に誰か起きてくるだろう。
ロビンとブルックは顔を見合わせて笑った。
サンジのご飯に喧しい喧騒。
この2つが揃って初めて、遠い異国で夢にまで見た『家庭の味』なのだ。